学生時代、とにかくはまった認知心理学。
D・Aノーマンとの出会いは、
彼の著書である「誰のためのデザイン?」がきっかけでした。
人とモノとの関係性は、技術の進歩によって刻々と進化しています。
そんな中、変わらないもの、普遍的なものについて理解することは、
ユーザーにデザインを提供する上でベースとなる、非常に重要な役目を持っています。
今回はその、「変わらないもの」「普遍的なもの」についてメモします。
■人は必ず失敗をする
どんなに詳しい説明やサポートをしても、
人間はふとしたきっかけで失敗してしまうケースがあります。
いわゆるヒューマンエラーです。
ほとんどの場合、経験不足からくる失敗が多いと思いますが、
十分な経験があるにも関わらず、失敗してしまうケースもあります。
UIデザインの場合、この「失敗する可能性」を十分に加味し、
「失敗をケアする仕組み」を前提に設計しなければいけません。
例えば、このブログを書いている途中に、「閉じる」ボタンを押したとしましょう。
「閉じるボタンが押された」というアクションに対して、
システムとして「画面を閉じる」アクションをする場合、
閉じるボタンを「明確に押した場合」と、「間違えて押した場合」では、
ユーザーに与える心的負荷が大きく変わります。
そこで、せっかく書いた本文を「ケア」する方法としては以下の機能が想定されます。
・すぐに閉じず、YES / NO の最終的な選択肢をユーザーに掲示する
・下書きとして自動で保存しておく
・押し間違えそうなところに「閉じるボタン」を置かない
このように、システム側で「ユーザーの失敗」をケアする仕組みをあらかじめ想定して、
失敗をリカバーする機会を作ることが重要になります。
■直感的かどうか
D・Aノーマンの著書では「アフォーダンス」という言葉がしばし出てきます。
アフォーダンス (affordance)
モノに備わった、ヒトが知覚できる「行為の可能性」という意味
例えば、ドアに「ドアノブ」が付いているか「くぼみ」が付いているかで、
「押し引きするドア」か、「引き戸」かの可能性を探ることができます。
この事象をUIで例えるならば、
UI上のボタンが「何の機能を意味するのか」ということが明確になっていなければなりません。
先ほどの「閉じるボタン」がただの「×」マークだけでは意味として不十分であり、
明確にユーザーに機能が伝わらない可能性があります。
ただし、最近流行りの「ミニマルデザイン」の視点で考えると、
文字で補足したりするあからさまな表現は敬遠されがちですが、
確認画面を挟んだり、1ステップ追加するなどして文字以外の方法でケアすることが可能です。
■複雑さと共存する
技術の進歩により、製品がより高機能になることは必然です。
その中でデザインの抱える問題点としては、
高度な機能をユーザーに伝えるために、複雑さを強いられる場面です。
D・Aノーマンは、「複雑さと共に暮らす―デザインの挑戦」という著書の中でも、
機能が複雑になることは構わないが、機能が分かりにくくなることに問題があるとしています。
これは、複雑な機能に対して、
複雑なままユーザーに伝えるのではなく、そこをいかにして簡単に、
より簡潔に伝えられるかがデザインが持つ重要な事柄であるということです。
今後もより高機能な技術が登場するかと思いますが、
より良い体験を、デザインの工夫でより身近なものへと昇華させることが、
我々デザイナーに求められる責任ということになります。
どんなに時代が変化しても、
普遍的で、変化しないものこそがデザインにおいて重要な指標であることは、
この先もずっと変わらないことであると感じています。
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